「まけないぞう」がつなぐ遠野ものがたり
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11月、釜石市と大船渡市の作り手さんに会いに行きました。
釜石では、お部屋の中からまけないぞうがお出迎えをしてくれました。お二人ともお元気です。お一方はもう92歳です。しかも数字に強くて、計算が早い!最近はデイサービスに通うのが楽しみの一つになったそうです。


みんな会えば津波の話になります。「津波当時は、子どものところへ行こうかどうか迷ったけれど、ぞうさんのお陰で、やることができて、お隣さんとも仲良くなれたから、ここにずっといることができたよ」とうれしい言葉を頂きました。いつも手作りのお料理をたくさん振舞ってくれます。今日ははじめてお父さんが釣り上げたマグロを頂きました。本当は市場に出すものですが、途中でサメに食べられて傷つき売り物にならなくなったそうで、漁師のお父さんも「自分で食べるなんて初めてだ」と、みんなで舌鼓を打ちながら美味しく頂きました。それにくわえてアワビ漁の時期ということもあり、とれたてのアワビも戴きました!海の幸に感謝の一日でした!


翌日は、大船渡市の綾里地区に行ってきました。
ここでは、当時は4人の作り手さんがいたのですが、お一人は亡くなられ、お一人は少し認知症が進んできて、いまはお2人だけ残ってまけないぞうを作ってくれています。11年という歳月の中でやはり寄る年波には勝てません。
それでも、いつも明るく迎えてくれます。「ぞうさん、かわいいもの。私のぞうさんは鼻が長いんだ!」「あ〜そうだね。私のぞうさんとは違うね」などとお互いのぞうさんを見ながら話も弾みます。ただ、コロナ禍によりいろいろ活動が制限され、踊りが趣味だった作り手さんはいまは踊りを辞めてしまったそうです。

人々にとって、交流や密というのは暮らしのとても大切なものということが今回のこのコロナを通してあらためて実感したことです。SNSを通して会議や会話はできる便利な時代になりましたが、やはりみなさん異口同音に「やっぱり対面がいいよね」と言います。まして、年を取り人との交流が減る中で、それ以上に交流の場を減らされることは、健康やいのちの危険もあります。この3年間で一気に年を取ったと感じる時もあります。
本当に細々ではありますが、まけないぞうが被災地のみなさんとそれを応援してくれるみなさんとの大切なつながりでもあります。みなさんからのメッセージが「一人じゃないんだ。みんな応援してくれているのね」と作り手さんは笑顔になります。
(増島 智子)

