2022年12月28日

【東日本大震災】レポートNo.317

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「まけないぞう」がつなぐ遠野ものがたり  
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11月、釜石市と大船渡市の作り手さんに会いに行きました。
釜石では、お部屋の中からまけないぞうがお出迎えをしてくれました。お二人ともお元気です。お一方はもう92歳です。しかも数字に強くて、計算が早い!最近はデイサービスに通うのが楽しみの一つになったそうです。

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みんな会えば津波の話になります。「津波当時は、子どものところへ行こうかどうか迷ったけれど、ぞうさんのお陰で、やることができて、お隣さんとも仲良くなれたから、ここにずっといることができたよ」とうれしい言葉を頂きました。いつも手作りのお料理をたくさん振舞ってくれます。今日ははじめてお父さんが釣り上げたマグロを頂きました。本当は市場に出すものですが、途中でサメに食べられて傷つき売り物にならなくなったそうで、漁師のお父さんも「自分で食べるなんて初めてだ」と、みんなで舌鼓を打ちながら美味しく頂きました。それにくわえてアワビ漁の時期ということもあり、とれたてのアワビも戴きました!海の幸に感謝の一日でした!

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翌日は、大船渡市の綾里地区に行ってきました。
ここでは、当時は4人の作り手さんがいたのですが、お一人は亡くなられ、お一人は少し認知症が進んできて、いまはお2人だけ残ってまけないぞうを作ってくれています。11年という歳月の中でやはり寄る年波には勝てません。
それでも、いつも明るく迎えてくれます。「ぞうさん、かわいいもの。私のぞうさんは鼻が長いんだ!」「あ〜そうだね。私のぞうさんとは違うね」などとお互いのぞうさんを見ながら話も弾みます。ただ、コロナ禍によりいろいろ活動が制限され、踊りが趣味だった作り手さんはいまは踊りを辞めてしまったそうです。

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人々にとって、交流や密というのは暮らしのとても大切なものということが今回のこのコロナを通してあらためて実感したことです。SNSを通して会議や会話はできる便利な時代になりましたが、やはりみなさん異口同音に「やっぱり対面がいいよね」と言います。まして、年を取り人との交流が減る中で、それ以上に交流の場を減らされることは、健康やいのちの危険もあります。この3年間で一気に年を取ったと感じる時もあります。
本当に細々ではありますが、まけないぞうが被災地のみなさんとそれを応援してくれるみなさんとの大切なつながりでもあります。みなさんからのメッセージが「一人じゃないんだ。みんな応援してくれているのね」と作り手さんは笑顔になります。
(増島 智子)


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2022年12月27日

【東日本大震災】レポートNo.316

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「まけないぞう」がつなぐ遠野ものがたり  
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11月、遠野の作り手さんに会いに行きました。隣近所でも普段はなかなか会う機会がなく、「ぞうさん来てくれたから、こうやって久しぶりにお茶っこできるのよ」と久しぶりの再会を喜んでくれました。

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 冬になってくると外出もままならないので、みなさん手芸をしたりすることが多くなります。ぞうさん以外にも着物をほどいて洋服にしたり、ビーズでキーホルダーを作ったりしています。「ビーズがないから、買ってきて欲しい」とお買い物を頼まれました。

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 また、ひとつうれしい再会もありました。作り手さんのご夫婦と津波当時の話をしていました。「家も何もかも流され、実家のある遠野に身を寄せ、タイミングよく仮設にも入居でき、いろんな人に支えられていてね。いつか遠野のみなさんにはお礼がしたいんだ」と昨日のように話を聞かせくれました。すると、「うちにはね、京都の寂光院さんからの観音様の色紙が飾ってあってね。それに守られているんだよ!」と。「えー。その色紙は、私たちが長年お世話になっている全日本仏教婦人連盟さんからご奉納頂きお届けしたものですよ!」と11年の時を経て観音様に再会することできたのです。当時仮設に住んでいたみなさんにお届けしたのですが、その時には無我夢中でお互いにはっきりと認識できていなかったので、まさかこうしていまでも大切にして下さっていることを知りませんでした。でも長い年月をかけて観音様がお導きしてくれたのだと思います。お二人は当時この色紙をもらった後に、わざわざ京都にある寂光院さんにお礼参りに行かれ、いまでも寝室で飾り、毎朝手を合わせているそうです。どうぞ、これからもお二人をお守りください。
                (増島 智子)
posted by 被災地NGO恊働センター at 17:10| ニュース・情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月01日

【東日本大震災】レポートNo.315

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「まけないぞう」がつなぐ遠野ものがたり  
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岩手県遠野市にまけないぞうの回収にやって来ました。遠野は日中、思ったよりも暖かです。朝晩は少し冷え込みストーブが欠かせません。夏の訪問以来ですが、遠野はすっかり冬景色となり、冬の風物詩でもある干し柿の暖簾が家々の軒下にぶら下がり、冬支度がはじまっていました。

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避難所からのお付き合いのある作り手さんも11年が過ぎ御年96歳となり、作り手さんの中では最高齢となりましたが、いまだに現役でまけないぞうを作り続けています。「ぞうさんタオル持って来てね。そうしないと”ボケ”ちゃうから」と、タオルを心待ちにしています。「たまにはリュック背負って、スーパーまで歩くんだよ。足腰も弱っちゃうからね!」ととてもお元気に過ごされています。
避難所でお会いした時も、とてもお元気でまけないぞうを作っては避難所のみなさんにプレゼントして、避難所の中がぞうさんでいっぱいになっていました。

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避難所での長谷川さん_R.jpg

2軒目の方も間もなく90代を迎える89歳の作り手さん。この方もお元気で、毎日近くのお寺までお散歩しています。makenaiznoneのみなさんからのお手紙もお渡して、「ぞうさんは、楽しみの一つだからね!こうしてずっと長く続けてもらえて感謝していますよ」と、嬉しいメッセージを頂きました。津波で旦那さんを亡くされ、住み慣れた土地を離れた場所の仮設住宅で生活しながらまけないぞうを作り続けています。当時は「ここの仮設はね、浜と違って風が違うのよ」というのが口癖でした。彼女が当時寄せてくれたメッセージには「今日はどんなお顔ができるかなと楽しみでもあります。目を入れて、リボンを付けて出来上がり、正面から眺め、横から眺めて、長いお鼻を軽くキューっと引っ張って可愛いよ!と声をかけてあげるの。なんとも言えぬ心が癒され、また作る気持ちが湧く、この連続です」と、あれからいままでずっと作り続けてくれています。

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避難所での佐々木さん_R.jpg
posted by 被災地NGO恊働センター at 16:09| ニュース・情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年08月13日

【東日本大震災】レポートNo.314

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「まけないぞう」がつなぐ遠野ものがたり  
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 この夏の岩手はいつも違いました。毎日のようにスコールのような雨が降り、30℃前後の日があるかと思ったら、22℃前後にもなる日もあり、10℃以上の温度差があるような日が続いてます。激しい気温変化に身体がついていきません。

 今回、初めて大阪から訪問してくださった自敬寺の服部ご住職は岩手県遠野市は初めての訪問となりました。実は、この少し前以前みなさんからクラウドファンディングで購入ささせて頂いた車が走行距離約17万キロとなり、不具合が出てきていました。この車も購入直後に2016年熊本地震、2018年西日本豪雨、2019年佐賀県武雄市の豪雨、2020年熊本県球磨川の水害、2021年佐賀県武雄市の豪雨などの被災地、その間に東日本大震災の被災地訪問も行い、数々の被災地に出動していました。ご協力頂いたみなさんにはこの場をお借りしてあらためてお礼を申し上げます。その後この車はCODE海外災害援助市民センターのMOTTAINAIやさい便を提供している長田区にあるNPO法人日越交流センター兵庫に譲渡させて頂き、活用してくれています。

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そんな時に、お持ちの車を手放したいということで、服部ご住職のお車を当センターに譲渡して頂きました。その車が初めての遠征で岩手の被災地を走るということで、ご住職が来てくれたのです。初日は、陸前高田市の作り手さんのところを訪問しました。Mさんは「ありがたいね」ととても喜んでくれました。震災後にできた防潮堤から海を眺め、震災遺構となったレストハウスや高田の一本松を視察しました。
その後は遠野市にある復興住宅にお邪魔しました。ご住職さんが来たということで、2人の作り手さんはいろいろと心の相談をされていました。近隣住民のお悩み事、これからの人生のこと、悩みは尽きません。たまに来てくれる私たちのようなよそものボランティアだからこそ話せることもあるそうで、お話が止まりません。
ご住職さんからは、「心の安定を大切に過ごしてください」と言葉を頂き、作り手さんもホッとされたようです。作り手さんたちには、ご住職さんの妹さんが作られたらマスクもプレゼントされ、みなさん笑顔が素敵です。
お車を提供頂き、遠路岩手県にも足を運んでくださった自敬寺の服部ご住職様にも心からお礼を申し上げます。ありがとうございました!
                              (増島 智子)
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posted by 被災地NGO恊働センター at 16:08| ニュース・情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年08月03日

【東日本大震災】レポートNo.313

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「まけないぞう」がつなぐ遠野ものがたり  
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 暑い夏の岩手訪問は久しぶりです。この時期はここ数年毎年のように発生する水害対応に追われていました。今年も各地でゲリラ豪雨や線状降水帯が発生し、被害が出ています。新型コロナウィスルも全国で、のきなみ過去最多の感染者数を数えています。気の抜けない夏ですが、岩手の夏をご紹介します。
 
 まけないぞうがCODE海外災害援助市民センターを通して、ウクライナ・ロシア支援を始めて、2ヶ月が過ぎました。岩手の作り手さんにこのことをお話すると「日本政府も武器になんか送らないほうがいいと思う。偉い人が現地に行って、双方納得するように話し合えばいいのに。これから国を背負っていく子どもたちを犠牲にして、ドンパチするなら偉い人たちだけですればいい。国民が立ち上がってむしろ旗あげて反対しなきゃない!戦争はどっちの国にしても特にならない。戦争さえなかったら安楽に暮らせたのに、日本という知らない国にきて、じゃがいも一つでももらったらどんなにうれしいことかと思うよ。どれほど辛い思いをしているかわからない」と話してくれました。

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中には、まけないぞうの手間賃を「今回のウクライナ・ロシア支援に寄付するわ!」と言って寄付してくれる作り手さんもいます。「私たちもお世話になったから」と寄付を手渡してくれました。

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ここ岩手県にもウクライナからの避難者の方が遠縁を頼って避難してきているそうです。ウクライナ在住だった岩手県洋野町出身の元日本兵の家族が親戚を頼って来ていて、町民の方たちから温かく迎えられているようです。
憎しみの連鎖から支え合いの連鎖が広がることを祈っています。

この度の、ウクライナ・ロシア支援へのまけないぞうのご協力を呼び掛けたところ、教会、コープこうべ、国東市社会福祉協議会、寺院、神道、makenaizoneほか個人・団体問わず応援を頂き、5000頭の販売目標ですが、現在1600頭以上のご支援を頂き、残り3400頭です。
引き続きみなさんのご協力お待ちしています。
CODE海外災害援助市民センターの「MOTTAINAIやさい便」の報告はHPのcode-jp.orgをご覧ください。                        
(増島 智子)
posted by 被災地NGO恊働センター at 12:52| ニュース・情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする