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「まけないぞう」がつなぐ遠野ものがたり
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2023年10月訪問 遠野レポートNO14
昨年の12月にまけないぞうの作り手さんがお亡くなりました。ちょうど、その直前の11月に訪問した直後のことでした。今度行ったらお墓参りに行きますと、旦那さんにお伝え致しました。そして、今回の訪問で、その旦那さんもこの8月に倒れ帰らぬ人となっていました。作り手さんのお墓参りがご夫婦揃ってのお墓参りになってしまいました。
この人は避難所からずっとまけないぞうを作っていて、「私、“まけないぞう”がないとだめなの」と、避難所から仮設住宅、そして復興住宅でも作り続けて、家の中にはぞうさんグッズでいっぱいになっていました。仮設生活の後半から体調が悪くなり、復興住宅では横になっていることが多くなりながらも、会うたびに「ぞうさん作りたい、ぞうさん作りたい」と話していて、一緒に作ったこともあります。
傍らで旦那さんは、お母さんのぞうさんづくりを眺めながら、タオルが裏返しになっていないか確認したり、お料理をふるまったりしてくれていました。私が一度食べて大好きになった鮭の白子が入ったおつゆを行く度に作ってくれたことを思い出します。
生前、お二人のもとへたくさんのボランティアの人たちがお伺いしました。遠野の菊池加代子さんらメンバーのみなさん、遠野まごころネットのボランティアさん、学生さん、makenaizoneのみなさん、CODE海外災害援助市民センターのみなさん、各地からボランティアに来てくれたみなさん、本当にありがとうございました。みなさんの心の中でMさんご夫妻は生き続けることでしょう。
お墓の傍らにはMさんの愛用の杖がそっと置かれていました。いのちに限りはあるとわかっていても、辛く寂しさがこみ上げます。お二人のお墓は町の高台にあり、静かに吉里吉里の海と人々を見守ってくれています。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。
(増島 智子)
※この活動は大塚商会ハートフル基金の助成を頂き実施しました。